📌 過去40年のデータが示す事実
第二次大戦後の主要な20の軍事衝突において、S&P500は平均-6%下落しましたが、19回中19回で平均28日後に回復しています。戦争は一時的なショックであり、長期的には経済のファンダメンタルズが市場を動かします。
🕐 主な紛争と市場の反応
| 紛争 | 年 | S&P500下落幅 | 回復期間 | 原油の反応 |
| ヨム・キプール戦争 | 1973 | -16.1% | 約2年 | +300%(石油危機) |
| 湾岸戦争 | 1990 | -15.9% | 約6ヶ月 | +100%($20→$40) |
| 米同時多発テロ | 2001 | -11.6% | 約1ヶ月 | -24%(需要減懸念) |
| イラク戦争 | 2003 | -4.6% | 約2週間 | 開戦で下落 |
| クリミア危機 | 2014 | -3.0% | 約1週間 | 小幅上昇 |
| ウクライナ侵攻 | 2022 | -13.0% | 約6ヶ月 | +50% |
| イラン戦争 | 2026 | -9.1%(3月末時点) | 進行中 | +45%($77→$112) |
Q. 株は戦争のたびに暴落するの?
「暴落」は稀。大半は一時的な調整で終わる
過去データから見えるパターンがあります。石油ショックを伴う戦争(ヨム・キプール戦争、湾岸戦争、2026年イラン戦争)は二桁%の下落と長い回復期間を要します。一方、石油供給に影響しない紛争(イラク戦争、クリミア危機)は比較的小幅な調整にとどまり、短期間で回復します。
つまり、地政学リスクの投資への影響は「原油に波及するかどうか」が最大の分かれ目です。
出典: RBC Wealth Management, 三井住友DSアセットマネジメント, 第一生命経済研究所
湾岸戦争(1990-91年)
原油が3ヶ月で倍増 → 開戦と同時に急落した「噂で買って事実で売る」の典型
1990年8月、イラクがクウェートに侵攻。原油価格は$20から$40に急騰しました。しかし1991年1月の多国籍軍開戦と同時に原油は急落し、株価は反転上昇。S&P500は開戦後6ヶ月で-15.9%の下落分を全て回復しました。
これは地政学リスクの典型パターン: 「不確実性が最大のときに底値をつけ、戦況が明確になると回復する」という法則を示しています。
出典: マネックス証券 米国株マスターへの道, 東洋経済オンライン
ウクライナ侵攻(2022年)
エネルギー危機と世界的インフレの引き金に
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻は、天然ガス供給の断絶を通じて欧州に深刻なエネルギー危機をもたらしました。日経平均は侵攻から営業日10日後に底値をつけ、下落率は-7%。
しかし、その後もインフレ圧力が続き、各国中央銀行は急速な利上げを実施。地政学リスクが金融政策の変更を引き起こし、景気後退リスクに転化した初めての現代的事例となりました。
出典: NEXT FUNDS, ダイヤモンドZAi, 三井住友DSアセットマネジメント
💡 地政学リスクが起きたとき、どの資産がどう動くのか?
「有事の金」「有事のドル買い」といった格言は本当でしょうか。過去のデータから、各資産クラスの典型的な反応パターンを整理します。
| 資産 | 典型的な反応 | 理由 | 持続期間 |
| 株式(先進国) | 下落 ↓ | リスクオフで売られる | 平均28日で回復 |
| 株式(新興国) | 大幅下落 ↓↓ | 資金逃避が加速 | 回復に数ヶ月〜 |
| 原油 | 急騰 ↑↑ | 供給不安の織り込み | 紛争収束まで |
| ゴールド | 上昇 ↑ | 安全資産への逃避 | 長期的に継続 |
| 米ドル | 上昇 ↑ | 基軸通貨への逃避 | 数週間〜数ヶ月 |
| 日本円 | 状況次第 ⇔ | 有事の円買い vs 原油高の円売り | ケースバイケース |
| 暗号資産 | 下落 ↓ | リスク資産として売られる | 株式と連動 |
| 国債(米国) | 価格上昇(利回り低下) | 安全資産への資金流入 | 数週間〜 |
Q. 「有事の金」は本当?
はい、歴史的にゴールドは地政学リスクで最も安定して上昇する資産です
ゴールドはどの国の政府にも属さない資産であり、通貨の信用が揺らぐ有事に買われます。2025年には中央銀行が863トンを購入(過去最高水準)し、2026年4月には$5,200/オンスを突破しました。
ただし注意点もあります。紛争が鎮静化すると「巻き戻し」が起きやすく、短期的な「一時避難」としての買いは利益確定で急落するリスクがあります。長期保有であれば、インフレヘッジとしても有効です。
出典: World Gold Council, 楽天証券トウシル, 東洋経済オンライン
Q. 「有事の円買い」はもう古い?
2026年のイラン戦争では「有事の円売り」が発生した
かつて日本円は「安全通貨」として有事に買われてきましたが、2026年のイラン戦争ではUSD/JPYが151円→160円台へ円安が進行しました。理由は明確です。日本はエネルギー輸入の約90%を中東に依存しており、原油高は日本の貿易赤字を拡大させるためです。
「有事の円買い」は過去の話になりつつあります。エネルギー価格に直結する中東の紛争では、円はむしろ売られる通貨になっています。
出典: K2 College, SBI証券
Q. ビットコインは「デジタルゴールド」として機能する?
現時点では「ノー」— ビットコインはリスク資産として売られる
ビットコインは「デジタルゴールド」と呼ばれることがありますが、2026年のイラン戦争では株式と同様にリスクオフで下落しました。3月のBTC価格は$83,000から$60,000台まで下落し、暗号資産の恐怖・強欲指数は「極度の恐怖」に。
ビットコインの値動きはゴールドよりもNASDAQとの相関が高く、地政学リスクの避難先としては機能していないのが現状です。長期的なインフレヘッジとしての議論は続いていますが、有事の短期避難先としては不適切です。
出典: CNN Business, Bloomberg
⚠️ 史上最大の石油供給途絶
IEA(国際エネルギー機関)は今回のホルムズ海峡封鎖を「世界石油市場史上最大の供給途絶」と表現しています。世界の海上原油・LNG輸出の約20%がホルムズ海峡を通過しており、その封鎖は1970年代の石油危機に匹敵するインパクトがあります。
📅 イラン戦争の市場インパクト — 時系列まとめ
2月28日 — 開戦
米国・イスラエルがイランへの空爆を開始
Brent原油は10〜13%急騰し$80〜82/バレルに。世界の株式市場は一斉に下落。イランは報復としてイスラエル・米軍基地・湾岸の石油施設に弾道ミサイルを発射。
出典: CNN Business, NPR — 2026年3月2日
3月中旬 — ホルムズ海峡封鎖
原油$100突破、ガソリン$4/ガロンに急騰
イランがホルムズ海峡の封鎖を実施。世界の原油供給の約20%が脅かされ、Brent原油は$100を突破。米国のガソリン価格は$4/ガロン(30%上昇)に。カリフォルニアでは$5を超えました。
出典: Al Jazeera, Morgan Stanley — 2026年3月
3月23日 — トランプ大統領が攻撃一時停止を表明
停戦期待で原油反落、株価反発
トランプ大統領が「生産的な対話」を示唆し、5日間の攻撃一時停止を命令。市場は停戦期待で原油が反落、株価は反発。しかしイランは15項目の和平案を拒否し、交渉は難航。
出典: CNN — 2026年3月23日
3月31日 — トランプ大統領「施設を破壊する」と警告
4月6日の期限を設定、市場に再び緊張走る
トランプ大統領が「発電所、石油施設を破壊する」と警告し、4月6日を期限として設定。Brent原油は$112に急騰。S&P500とNASDAQは3月として2022年以来最悪の月間パフォーマンスを記録。
出典: Bloomberg — 2026年3月31日
4月1日 — イラン大統領が停戦受け入れを示唆
S&P500が+2.9%の急反発
イラン大統領が「停戦に前向き」と発言。市場は楽観ムードに転じ、S&P500は+2.9%の急反発。しかし日経225は-1.58%と逆行。エネルギー依存の日本市場は回復が遅れています。
出典: Fortune — 2026年4月1日
4月2日 — トランプ大統領演説「あと2〜3週間激しく攻撃する」
市場の楽観が一転、原油再び$110超え
トランプ大統領が国民向け演説で「tremendous progress(大きな進展)」と述べつつも、「あと2〜3週間、極めて激しく攻撃する」と宣言。ウォール街は「エスカレーション」と解釈し、原油は$107に急騰。韓国KOSPI -4.47%、日経225 -2.38%、欧州Stoxx600 -0.96%と世界同時株安に。
出典: CNBC, Fortune, Euronews — 2026年4月2日
Q1
戦争が始まったら、持っている株をすぐ売るべき?
A. 原則「売らない」が正解です。
過去の20の軍事衝突で、S&P500は19回、平均28日で回復しています。パニック売りをすると底値で売って回復に乗れないという最悪のパターンに陥ります。
ただし例外があります。生活防衛資金(6ヶ月分の生活費)が確保できていない場合は、リスク資産を一部現金化することを検討してください。投資は「余裕資金」で行うのが大前提です。
Q2
今からゴールドを買うのは遅い?
A. 短期トレードとしては注意が必要。長期保有なら検討の価値あり。
ゴールドは2026年4月時点で$5,200/オンスと史上最高値圏です。紛争が鎮静化すると短期的な「巻き戻し」が起きるリスクがあります。
一方、長期的にはインフレヘッジ・通貨分散として有効です。ポートフォリオの5〜15%をゴールドに配分するのがセオリー。投資手段としては金ETF(例: SPDRゴールドシェアーズ、三菱UFJ純金ファンド)が手軽です。
Q3
円安が進んでいるけど、外貨預金に逃げるべき?
A. 慌てて為替ポジションを変えるのは危険です。
有事の為替変動は激しく、トランプ大統領の一言で数円動きます。為替ヘッジ付きの投資信託を活用するか、そもそも長期投資であれば為替変動は平均化されるため、無理にヘッジする必要はありません。
ただし、FXでレバレッジをかけている場合は注意。有事の急変動でロスカットが発生する恐れがあります。ポジションサイズの見直しを推奨します。
Q4
戦争中に「買い」を入れるのはアリ?
A. 長期投資家にとっては歴史的に「買い場」であることが多いです。
過去の事例では、不確実性が最も高い時期に株価は底値をつけ、戦況が明確になると回復しています。湾岸戦争では開戦と同時に株価が反転上昇しました。
ただし「底値を正確に当てる」のは不可能です。毎月の積立投資を淡々と継続するのが最もリスクの低い方法です。まとまった資金がある場合は、一括ではなく3〜6ヶ月に分けて分割投入することで時間分散できます。
Q5
NISAの積立を一旦止めたほうがいい?
A. 絶対に止めないでください。
積立投資の最大のメリットは「安い時に多く買える」ドルコスト平均法です。株価が下落しているいまこそ、同じ金額で多くの口数を買えるチャンス。下落局面で積立を止めることは、バーゲンセールに参加しないのと同じです。
過去にウクライナ侵攻で積立を止めた人と継続した人では、1年後のリターンに大きな差が出ています。
Q6
防衛関連株は買い?
A. 短期的には注目されますが、長期投資の観点では慎重に。
日本の防衛関連株(三菱重工、川崎重工、IHIなど)は2026年初頭から堅調です。しかし、紛争終結とともに「期待剥落」で下落するリスクがあります。個別株投資はリスクが高いため、分散されたETFや投資信託を中心にポートフォリオを組むのが安全です。
出典: Bloomberg — 2026年1月7日
⚠️ 免責事項
本記事は情報提供のみを目的とし、特定の金融商品の購入や売却を推奨するものではありません。投資には元本を下回るリスクが伴います。投資判断はご自身の責任で行ってください。
参考: RBC Wealth Management, 三井住友DSアセットマネジメント, 第一生命経済研究所, マネックス証券, QUICK Money World, マネイロ, SBI証券, K2 College, World Gold Council, Bloomberg, CNN Business, CNBC, Fortune, Morgan Stanley, Al Jazeera, NPR, 東洋経済オンライン, ダイヤモンドZAi, PwC Japan